地域の課題を学生や企業を結びつけることで、解決する。
その出会いを創出するコーディネーターがいる。
一般社団法人ワカツクのインターンシップ事業を通して、新しい地域の仕事づくりをお伝えします。
高い運転技術で信頼を獲得し、貸し切りバスの運行を主な業務とする仙台バス株式会社。業績は順調ですが、代表取締役会長の猪股正之さんには「夢」がありました。「ほかにはない自主企画ツアーを作りたい!」。ありきたりでない、地域の魅力を体感し、人と触れ合うことができるオリジナルバスツアーの企画から集客、実施までのすべてを担うインターン生を募集。白百合女子大3年の高階茜さんが挑みました。
ワカツクの長期実践型インターンシップを導入した理由は。
貸し切りバスを主な業務としています。従業員は50人ほどですが、長年入れ替わりがなく、仕事もマンネリ気味なのが気掛かりでした。新しい風を吹かせたいと考え、導入しました。インターン生に任せた仕事は、自主ツアーの企画から集客、実施までのすべての業務と、事業運営のマニュアル作り。近年ほとんど着手できていない「自前のバスツアーを新しい事業に育てる」という夢を叶える足掛かりになればと期待しました。
実際に導入していかがでしたか。
8月下旬にスタート、12月にはツアー実施にこぎつけました。企画を立て告知、集客、販売、さらに運行までやり遂げたのは立派です。栃木県にある「あしかがフラワーパーク」のイルミネーション見物を中心にしたツアーで、従来のわが社では出てこないアイデアでしたね。期間内に春のツアーも企画。同時に誰でも業務に携われるようマニュアルを作ってくれたので、社員が引き継いでいます。まさにインターン生が新しい事業を作ったといえます。
社員の中には当初、面倒が増えるのではと警戒した者もいたようです。しかし、高階さんの熱心に働く姿に刺激を受け、積極的に手助けするようになりました。逆にパソコンを教えてもらうなど、よい関係が築けたようです。
インターンシップのメリットとは。
ワカツクのインターン生は目的意識と働く意欲を持って入ってくるので、実際に役立つ人材であることは確か。そのうえ、業界や社内の常識にとらわれない行動や発言は、社内に風穴を開けてくれますね。コーディネーターの的確なフォローがあるので、途中で計画倒れになることもなく安心です。
「社員の負担を増やさずに新しいチャレンジをしたい」と考える経営者には、ぜひ勧めたいですね。夢の実現への一歩になるはず。わが社ではまさにそうでした。
貸し切りバスを主な事業とする。東日本大震災で被災し、車両の半数が津波で流出、顧客データも消失したが、再建。今後は個人客向けの自社企画ツアー事業を拡大すべく構想中。
所在地:岩沼市空港南4丁目1-7
問:TEL 0223-23-4731
URL http://www.senbus.co.jp/
インターンシップに応募した理由は。
負けず嫌いの私。大学を卒業するときには周囲より一歩先にいたい、と意識していました。アルバイトや学園祭実行委員もしていましたが、プラスαの経験を積みたかった。人を喜ばせることが好きなので、仙台バスで楽しいツアーを企画したいと思い、応募しました。
やってみてどうでしたか。
猪股会長の方針は、有名な観光地ではなく、地域の人と触れ合える体験型ツアーの企画。共感はできたのですが、とても難しかった。知られていない場所は私も知らない!って(笑)。社内にある過去の旅行資料を調べたり、社員の方に聞いたり、各地の観光協会に電話したり、できることは何でもやりました。初めのツアーが実施できたときは、本当に感動しました。
成長できたことは。
企画から実施まですべて任されるなんて、ほかではできない経験。業務の過程で社外の方々と交渉するのも貴重な体験でした。また、負けず嫌いの私は人に頼ったり尋ねたりすることが苦手だったのですが、インターンシップを通して「仕事は一人ではできない」と知り、謙虚さや頼ることを学びました。すべての経験が、就職活動や実際に働く上で役に立つと思います。
ワカツクのサポートはいかがでしたか。
精神的に苦しいときがあって、コーディネーターに何度も相談しました。話を聞いてもらい、助言を受けるうちに原点に戻り、頭の中を整理できました。
研修会ではほかのインターン生と仲良くなれました。情報交換や悩みの相談ができて、とても心強かったです。また、ビジネスマナーやプランの立て方もしっかり教えてもらえました。
「興味はあるけれど授業やアルバイトと両立できるか不安」という人は多いと思います。私もそうでしたが、時間は絶対に作り出せる。「なりたい自分」が明確にあれば、必ずやり遂げられます!
今回のケースはどのようにマッチングしましたか。
猪股会長の「自主ツアーを運行したい」という強い想いに、高い熱量で応えられると思ったのが、高階さんの「人を楽しませたい」という動機でした。また会長には、将来的な新卒採用の目標があり、新しい人を受け入れる土壌を作りたいという願いも。明るく積極的な彼女なら、自ら入っていってくれると考えました。
期間中のフォローはどのように行いましたか。
日報のチェック、毎月のミーティング、そのほかに研修会を行います。高階さんにはモチベーションのキープが難しい時期がありました。繰り返し面接を行って課題を洗い出し、次の目標とそれを達成する方法を一緒に考えることで、立ち直ってくれたと思います。
中間研修の際に、会長と高階さんが2人で長期計画を練り上げたことは一つの転機。ここで「何のためにインターンをするのか」「今、何をすべきか」が腑に落ちたようでした。修了した今、ずいぶん精悍な顔つきになったのを見ると、苦労して成長したことがよく分かりますね。
インターンシップ事業の目的とコーディネーターの役割について教えてください。
若い人と一緒にチャレンジする経営者が増え、熱く応える学生が増えれば、地域に新しいことが起きる。するとチャレンジする土壌が育ち、連鎖していく…。この循環で地域を元気にすることが、ワカツクの長期実践型インターンシップの狙いです。
コーディネーターの仕事としては、マッチングが非常に重要だと考えています。経営者の叶えたいことや企業の現状を熟知し、応募学生の性格やニーズを的確に把握して引き合わせることに腐心します。また期間中、学生の「熱感」をどこまで高められるかにも、気を配ります。インターンシップが修了したときに企業の挑戦が軌道に乗り、学生の顔つきがたくましく変わる――それが私たちの喜びですね。
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